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新元号「令和」の字体について

世の中は、新元号に沸いてますね。
とくに、書写、書道の界隈では、早速書いてみたという揮毫がTLを埋めています。

その中で「令」の字につていは、ワイドショーでも取り上げられるくらい物議を醸しています。みんなそんなに漢字に興味あったっけ?普段からそんなに気にしてたっけ?(-_-)っていう感じです。みんな騒ぎすぎ・・・

・・・とは思うのですが、意味的な問題はともかく、字体についてはペンシュウジャー(なに?)にとっては、どう書けばいいの?というのは重要な問題なので書写、書道的に私見をまとめておきます。

問題となってるのは、「令」の楷書の字体で、世の中に出回ってる字体が概ね次の三種あって、結局どれで書 けばいいの?ということでしょうか。
三種

官房長官が示した揮毫は、下の部分が「卩」になったAの形でしたね。それに対して、私たちが学校で習い、普段書いている形が「マ」の形のBが多いです。さらに、活字のように三画目がヨコ画になったCも印刷物などでよく見ます。もっと細かく言うと、4画目を「マ」のように書くか、「卩」のように書くかでも分かれています。

書写、書道に関係なければ、どれも一定の市民権を得てるから「どれでもええやん!」と思います。普段手書きでろくすっぽ書かないのに、なんで急にこだわるの?と奇異にも思います。

ちまたの”センモンカ”(なんでカタカナ?)の意見は、おおかたが「どれも間違いではない」だと思いますが、その説明がなんか微妙に気持ち悪い(´・ω・`)

■「書き文字と印刷文字の慣習の違い」?
これが一番気持ち悪い説明です。たしかに、活字ではCの形が多いですが、じゃあCの形が手書きで書かれてこなかったのかといえばそうでもありません。

IMG_8498[1]

書道字典をめくれば、だいたいどの形もあります。
「手書き文字と印刷文字との習慣の違い」というのは、現代の活字文化になってからに限定した説明であって、書いてる人は手書きでいろいろな形で書いてるわけです。

■3画目をヨコ画、最終画をタテ画で書くのは、隷書の名残
どちらでもいい、と説明する「センモンカ」の人でも、こういう言い方する人がいます。この説明もちょっと気持ち悪い。

漢字の移り変わりは、確かに時代とともに変わってきて、甲骨・金文の時代から篆書・隷書になり、草書、行書、楷書へと変わってきました。楷書については、だいたい唐の時代(西暦700年前後)にその形が確立したと言われています。楷書の極測と言われている「九成宮醴泉銘」や「孔子廟堂碑」は初唐(600年代)に書かれています。

上の書道字典を見ると、「九成宮醴泉銘」では最終画をタテ画で、「孔子廟堂碑」には「令」の字が見当たりませんが、同時代の三大家の一人である褚 遂良の「雁塔聖教序」では「マ」の形で書かれています。「九成宮醴泉銘」が632年ごろ、「雁塔聖教序」が653年ですから、この20年の間に書き方が変わったのか?

たしかに、当時、唐の太宗がいろんな書き方のある漢字を整備しようとしたので、このあたりで何かのアクションがあったかもしれません。九成宮醴泉銘は隷書の名残を残し、雁塔聖教序は新しい書き方をしたのかもしれない。

でも、それは当時の話で、1300年経った今日で「卩」で書くのは隷書の名残だ・・・なんて説明はナンセンスじゃないかと思うわけです。漢字は、甲骨文字から楷書まで有機的に変化してきたものなのだから、名残といえば全部名残になります(´・ω・`)

■日本の楷書の書き方問題の多くは近現代に入ってからの話
ペン習字、硬筆書写で問題となる漢字の書き方の問題は、むしろ近現代に入ってからの話だと思うわけです。古くは「康煕字典」も多くの問題を残したのですが、要するに、時の権力者が「漢字いろいろありすぎ!どれかに統一しろよ!」と無理やり決めさせるということが、長い歴史で幾たびも起こり、我が国では、戦後の当用漢字、常用漢字、教育漢字の制定でさらに大きく変化させた書き方の「標準規格」が作られた問題がいちばん直接的な問題だと思うわけです。

とくに、戦後の当用漢字では、GHQの命令で「日本の漢字、ヤヤコシイし、ムツカシスギマ~ス!」ということで、できるだけ簡略化したりひとつの書き方に統一しようとしたりしたのが、大きな混乱を巻き起こすわけです。当時の国語・漢字学者たちがカンカンガクガクしたのは、議論に参戦していた江守先生の本などを読むとよく分かります。

江守先生の本を読むと、「漢字の書き方はいろいろあって、国の事情で形決めるのはいいけど、違う書き方が間違ってるわけじゃない!」と強く手書き文字の自由さを主張しているわけです。昨日今日出てきた「センモンカ」たちが第一人者みたいな顔してインタビュー受けてたりするのが滑稽です。

この当用漢字で定められた標準の字体問題は、ほかにもっともっと問題となる字がいっぱいある中、こと「令」の字については、「卩」の書き方も「マ」の書き方も近代まで伝えられていて、学校教育では「マ」で書こうね、という以外は「卩」も「マ」も両方日常で使われてきた字で、いわゆる標準字体問題としてもそんなに問題な字ではありません。

■ペン習字でどっち書けばいいのん?
じゃあ、肝心のペン習字、硬筆書写ではどっち書けばいいのか?
ペン習字、硬筆書写といっても、このブログでも書いてきたように、流派によって考えがいろいろ変わります。

一番大きいのは、「文科省硬筆書写技能検定」準拠かどうか。
多くのペン習字の流派は、硬筆書写技能検定に準拠してることを謳ってます。他にも、いろんな毛筆書道の流派でも硬筆部門がありますが、毛筆の流派では毛筆が主であって、あまり「標準規格」を意識していないところが多いように思います。

硬筆書写技能検定は、文科省が後援している資格試験ですから、楷書は文科省の標準に準拠して教えるのが原則になってます。常用漢字や学校教育漢字の標準の字体を意識せざるを得ません。学校教育では、「マ」の形で教えるのが標準になっていますからBの形で書くのが無難ということになります。ただし、常用漢字では手書き文字の習慣による許容の字体も定められていて、最近はとくに許容の字体を書いても間違いじゃないことが強調されつつありますから、Aの形でも許容されると思いますが、その辺は流派や講座によって判定基準が話し合われることでしょう。間違いじゃないけど、どっちが望ましいと「する」か・・・くらいの問題だと思います。

パイロットは、硬筆書写技能検定準拠ですし、系統の字典でも「マ」の形で書いているものが主ですので「マ」の形で書いておけばいいわけです。

文科省、文化庁スタンダードじゃなければ、どちらを書いても構わないということになると思います。だから、「書道」の人がどっちが好きか、とか、「流派」ではどっちが好きか、という問題でしかありません。そこに正しい、間違ってると言える基準はないと思います。

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甲骨・金文~楷書まで


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Author:@Sai
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本ブログは、私の趣味の記録です。趣味の勉強ノートと割り切ってるので、お見苦しい個所も多々ありますが、よろしければご笑覧ください。
このブログは、2013年6月より開始しております。
2013年3月からパイロットペン習字通信講座を開始しました。
2013年7月から競書誌ペン時代を始めました。
2015年4月から競書誌ペンの光を始めました。
2015年12月からお遊び毛筆始めました。
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